ヨウ素は甲状腺ホルモンを作る材料です。
「ヨウ素」は「ヨード」ともいい、昆布などの海藻類に多く含まれている栄養素のひとつです。
甲状腺ではヨウ素を材料として、甲状腺ホルモンを作っています。
世界ではヨウ素不足の人が多い
人口70億と言われる世界の中で、16億人ほどの人がヨウ素不足の状態にあります。
その一方で、日本人はヨウ素を必要以上に摂取していることが多いです。
日本人が口にするものの中には、多かれ少なかれヨウ素が含まれています。特に多く含まれているのは海藻類で、なかでも「昆布」が群を抜いています。
昆布は「だし」として醤油・味噌・酢などの調味料にも多く含まれます。
日本人は知らないうちに必要量以上のヨウ素摂取している世界でもまれな国民です。
ただ、ヨウ素が多すぎるからといって、甲状腺ホルモンが過剰に作られるということはありません。
甲状腺にはそのようにならない仕組みがあるからです。
大量のヨウ素で甲状腺機能低下症になることがある?
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料なのですが、不思議なことに大量のヨウ素を取り続けると逆に甲状腺ホルモンの産生が減って、甲状腺機能低下症になる人がいます。
橋本病の人に多い傾向があり、昆布を毎日食べ続けているような方ではホルモン不足状態になることはよくあります。
ヨウ素の摂りすぎに気を付ければ、すぐに元に戻ります。
「抗サイログロブリン抗体」や「抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体」が陽性で、橋本病があると言われたことがある方は、昆布の食べ過ぎには気を付けた方が良いかもしれません。
大量のヨウ素を含む食品以外のもの
大量のヨウ素を含んでいる食品以外のものに、不妊の検査などで行う卵管造影の時に使われる造影剤があります。
造影検査を受けてから半年~1年間ぐらい甲状腺の働きに影響する場合があります。
この造影剤を使う前に甲状腺機能を調べておき、検査してからも定期的に甲状腺ホルモンを調べて、甲状腺機能低下症と分かった場合は、回復するまで甲状腺ホルモン(チラーヂン)を内服すれば大丈夫です。
この他、イソジン系のうがい薬に大量のヨウ素が含まれています。
これで1日に何度も毎日のようにうがいする、というようなことをしなければ影響はありませんが、新型コロナ対策として何度もうがい薬を使用している方は、知らないうちにヨウ素過剰になっている可能性はあります。
海藻類に対する誤った知識
「甲状腺の病気の人は海藻類を一切食べてはいけない」という誤った情報があります。
例えばワカメなどの、昆布以外の海藻は、よほど大量に食べ続けなければ甲状腺機能低下症にはなりません。
ヨウ素はバセドウ病の治療に使うこともあります
バセドウ病は甲状腺ホルモンの産生が過剰になる病気です。
通常はメルカゾールやチウラジールといった抗甲状腺薬を使ってホルモンを減らす治療をします。
ヨウ素にもこれと同じ作用があるので、治療に使うことがあります。
ふくおか内科クリニックでは、「ヨウ化カリウム丸」という錠剤を使用しています。
抗甲状腺薬で治療すると副作用が起こることがありますが、ヨウ素にはそれがありません。
効果が不十分だったり、効きが悪くなったりすることがありますが、ヨウ素治療が合う患者さんには長く使えます。
また抗甲状腺薬と一緒に使うこともあります。
甲状腺の病気は長く付き合う必要がありますので、正しい知識を身に付けていくことはとても大切です。
ご質問がありましたらお気軽にご相談ください。
ふくおか内科クリニック 院長 福岡勇樹
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