甲状腺機能が正常の橋本病の考え方について
健康診断や血液検査で「橋本病の可能性があります」と言われたものの、「甲状腺ホルモンは正常です」と説明され、戸惑った経験はありませんか?
「病気なの?それとも大丈夫なの?」と不安になる方も多いと思います。
今回は、「甲状腺機能が正常の橋本病(いわゆる無症候性橋本病)」について、一般の方向けにわかりやすく解説します。
橋本病とはどんな病気?
橋本病は、体の免疫が自分の甲状腺を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。
本来、免疫はウイルスや細菌から体を守る働きをしますが、橋本病では誤って甲状腺を敵とみなしてしまいます。
その結果、甲状腺に慢性的な炎症が起こり、長い年月をかけて甲状腺の働きが低下していくことがあります。
「甲状腺機能が正常」とはどういう状態?
橋本病と診断されても、すべての人で甲状腺機能が低下しているわけではありません。
血液検査では主に以下のホルモンを確認します。
・TSH(甲状腺刺激ホルモン)
・FT4(遊離サイロキシン)
これらが正常範囲に収まっている場合、「甲状腺機能は正常」と判断されます。
つまりこの状態は、
「 免疫の異常(橋本病)はあるが、ホルモンはまだ保たれている段階」
と考えることができます。
なぜ正常のままでいられるのか?
甲状腺は予備力(余力)が非常に大きい臓器です。
多少ダメージを受けても、すぐに甲状腺機能低下症には至りません。
そのため、
抗体(TPO抗体・サイログロブリン抗体)は陽性
でもホルモンは正常
という状態が長く続くことがあります。
この段階は「機能低下症の前段階」ともいえる状態です。
症状はあるの?
基本的には、甲状腺機能が正常であれば明らかな症状は出ません。
ただし実際には、
・なんとなく疲れやすい
・むくみやすい
・体の冷えを感じる
などの軽い不調を感じる方もいます。
しかし、これらは甲状腺以外の原因でもよく見られるため、
この段階では「橋本病のせい」と断定はできません。
治療は必要なの?
多くの場合、すぐに治療は必要ありません。
甲状腺ホルモンが正常であれば、飲み薬(チラーヂンなど)を使う必要はなく、
基本は「経過観察」となります。
ただし、以下の場合は治療を検討していくことになります。
・TSHが徐々に上昇している
・妊娠中または妊娠希望
・明らかな甲状腺機能低下症に移行した場合
・強い症状がある
どのくらいの人が悪化するの?
橋本病があっても、必ずしも全員が甲状腺機能低下症になるわけではありません。
一般的には、
年間2~5%程度が機能低下に進行すると言われています。
つまり、多くの方は長期間「正常のまま」経過します。
日常生活で気をつけること
甲状腺機能が正常な橋本病では、特別な制限は基本的にありません。
ただし、以下の点には注意するとよいでしょう。
① 定期的な検査
最も重要です。
半年~1年ごとに血液検査を行い、甲状腺ホルモンに変化がないかチェックします。
② ヨウ素の過剰摂取に注意
昆布や海藻類に多く含まれるヨウ素は、摂りすぎると甲状腺機能に影響することがあります。
日本人はもともと摂取量が多いため、
・昆布だしを大量に毎日使う
・健康食品でヨウ素を追加摂取する
といった極端な摂取は避けた方が安心です。
③ 体調変化に気づく
以下のような症状が出た場合は受診を検討しましょう。
・強いだるさ
・体重増加
・むくみ
・便秘
・寒がり
これらの症状は甲状腺機能低下症のサインの可能性があります。
妊娠との関係
橋本病は女性に多く、妊娠と関係が深い病気です。
甲状腺機能が正常でも、
・妊娠中に機能低下が起こることがある
・流産や早産のリスクに関係する場合がある
ため、妊娠を希望する場合は事前に医師へ相談することが大切です。
TSHとFT4を良好な値にすることは、妊娠前の準備としてとても重要です。
「病気」とどう向き合うか
「橋本病」と聞くと不安になるかもしれませんが、
甲状腺機能が正常であれば、過度に心配する必要はありません。
大切なのは、
・今の状態を正しく理解すること
・必要以上に不安にならないこと
・定期的にフォローすること
です。
橋本病は「急に悪くなる病気」ではなく、
ゆっくりと経過を見るタイプの病気です。
まとめ
甲状腺機能が正常の橋本病は、
・免疫異常はあるがホルモンは保たれている状態
・多くは無症状で治療不要
・一部は将来的に機能低下へ進行
・定期的な検査が最も重要
という特徴があります。
「今は大丈夫。でも将来に備えて見守る」
それがこの状態の基本的な考え方です。
ふくおか内科クリニックでは、橋本病の治療に力をいれています。
ご心配な方は、ぜひご相談ください。
ふくおか内科クリニック
院長 福岡勇樹
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