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2026.02.01

脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)診療ガイドラインを詳しく解説します。

脂質異常症・高コレステロール

「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドライン」は、日本動脈硬化学会が中心となり、動脈硬化性疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)の発症・進展を予防するために「脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)」をどう診断・治療するかを体系的に示した診療指針です。2023年6月に 2023年版が発行され、それに準じて実臨床での対応が進められています。

1. 脂質異常症とは?診断基準と意味

脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド:TG)が正常範囲を外れている状態をいいます。これらの異常が長期間続くと、血管壁の動脈硬化(アテローム形成)が進み、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患リスクが上がります。

診断項目と基準値の例

一般的な診断基準は以下の通りです(空腹時採血を原則としつつ、非空腹時のTG評価も行います)。
• LDLコレステロール(悪玉コレステロール)≧ 140mg/dL
高いほどリスクが高く、動脈硬化の主要な因子とされます。
• HDLコレステロール(善玉コレステロール)< 40mg/dL
低いとリスクが上昇します。
• トリグリセライド(TG、中性脂肪)≧ 150mg/dL
高値は冠動脈疾患や脳梗塞リスクを高めます。
• Non-HDLコレステロール
非HDL-Cは総コレステロールからHDL-Cを差し引いた値で、動脈硬化関連脂質を包括的に反映します。

ポイントとして、2023年版ガイドラインでは:
• 非空腹時(随時採血時)のTGの基準(175 mg/dL以上)を設定し、検査の使いやすさと動脈硬化リスク評価に活かす方向が採られました。

2. 動脈硬化性疾患リスク評価

脂質異常症の治療戦略は、患者ごとの 動脈硬化性疾患発症リスク(絶対リスク) に基づきます。日本独自の疫学データを基にした 久山町研究のリスクスコアを用い、冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞を含めた複合的なアウトカムで将来リスクを推定します。
リスク評価の結果をもとに、脂質異常症の管理目標が「低リスク」「中リスク」「高リスク」「二次予防(既往あり)」といったカテゴリー別に設定されます。

3. 管理目標値(LDL-C中心)

LDL-C(低密度リポタンパク質コレステロール)は動脈硬化リスクへの影響が最も明確な脂質指標であり、ガイドラインではLDL-Cを中心に管理目標が示されています。

主要な管理目標例

• 低リスク者:LDL-C < 160 mg/dL
• 中リスク者:LDL-C < 140 mg/dL
• 高リスク者:LDL-C < 120 mg/dL
• 二次予防(心筋梗塞・脳梗塞既往):LDL-C < 70 mg/dL(特に高リスク群)
※ 上記は代表例であり、糖尿病や慢性腎臓病などの合併症がある場合は厳格化されることがあります。
HDL-C(善玉) は一般に 40 mg/dL以上を目標とし、TG(中性脂肪) は 150 mg/dL未満を一つの目標とします。

4. 生活習慣改善:治療の基盤

薬物療法と並んで、生活習慣改善は予防の基本です。ガイドラインでは以下の改善が推奨されます。
【食事】
• 脂質の質の改善:飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を増やす。
• 食事パターン:魚、野菜、果物、大豆食品中心の日本食パターンは血中脂質改善に有効とされます。
【運動】
• 定期的な 有酸素運動(1日30分以上、週3〜5回程度)と、筋力維持のための運動。
【体重管理】
• 適正体重(BMI 18.5〜24.9程度)を維持し、内臓脂肪を減らすことが改善に寄与します。
【禁煙・節酒】
• タバコは動脈硬化リスクを増強するため禁煙が強く推奨され、飲酒量の適正化も重要です。

5. 薬物療法:LDL-C低下が中心

生活習慣改善だけで十分な改善がみられない場合や、高リスクカテゴリーの場合は薬物療法が行われます。主な薬剤は以下の通りです。

●スタチン(第一選択)
• コレステロール合成酵素(HMG-CoA還元酵素)阻害により LDL-C を強力に低下させ、心血管イベントを予防するエビデンスが最も強い薬剤です。

●エゼチミブ
• 小腸でのコレステロール吸収阻害により LDL-C を低下させ、スタチンとの併用でさらなる効果が期待されます。

●PCSK9阻害薬
• LDL受容体再利用を阻害するPCSK9を抑え、LDL-Cを大幅に低下させる新しい強力な薬剤で、高リスク例や二次予防例で利用されます。

6. 特殊な病態への対応

ガイドラインでは、一般的な一次予防に加え、以下のような状況にも対応が示されています。

• 二次予防:既往者はより厳格な LDL-C 目標が設定され、積極的な薬物療法が推奨されます。
• 糖尿病合併例:合併症の有無で LDL-C 目標が調整され、より強力な治療が必要になることがあります。
• 家族性高コレステロール血症:遺伝性で極めて高リスクなため、特殊な治療(例:LDLアフェレーシス)なども考慮されます。

7. 日常診療でのポイント

• 定期検査:血中脂質は定期的に測定し、変動や治療効果を評価します。
• 患者さん指導:患者さんご自身が生活習慣を改善し、リスク因子を管理する意識を高めることが重要です。
• 総合リスク管理:高血圧、糖尿病、喫煙など他のリスク因子との併合管理が動脈硬化予防に有効です。

まとめ:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドラインの意義

「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドライン」は、日本人の生活習慣・疫学データを背景に、動脈硬化性疾患の発症リスクを包括的に評価し、個々の患者さんに応じた診断・治療戦略を提示する指針です。診断基準、絶対リスク評価、管理目標、生活および薬物療法、特殊疾患対応などを体系的に整理し、予防医療の質を高める役割を果たしています。

しっかりとしたリスク評価に基づいたコレステロールや中性脂肪の管理は、心血管疾患予防の中心的戦略であり、患者さんの健康寿命を延ばすための重要な基盤となります。

ふくおか内科クリニックでは脂質異常症(コレステロールや中性脂肪)の治療に力を入れています。ご心配な方は、是非ご相談ください。


ふくおか内科クリニック
院長 福岡勇樹

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