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2023.03.28

新しい肥満症治療薬(保険適応)ウゴービについて

お知らせ

ウゴービ皮下注(セマグルチド)の効果や作用機序について、詳しく解説します。

2023年3月27日、厚生労働省より「肥満症」を対象疾患としたウゴービ皮下注(セマグルチド)が正式に承認された、と報じられました。
肥満症治療薬として期待される「ウゴービ」について解説します。

肥満症の方にとって、30年ぶりの新規治療薬です。

これまで「肥満症」に対する保険診療で使用可能な薬物療法としてはサノレックスや防風通聖散くらいしかありませんでした。サノレックスは「高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35kg/m2以上)」にしか使用できず、処方は3か月間までという期間の限定があり、また強い副作用が出る場合があり慎重に使う必要がありました。防風通聖散は副作用が少なく使用しやすい薬剤でしたが、体重減量効果に個人差が大きいことが問題でした。

今回ご紹介するウゴービは、以下の場合の肥満症に使用できます。

高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。

・BMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上

※肥満に関連した健康障害:
1. 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
2. 脂質異常症
3. 高血圧
4. 高尿酸血症・痛風
5. 冠動脈疾患
6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
8. 月経異常・女性不妊
9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10. 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
11. 肥満関連腎臓病

保険適応になるBMIと身長体重の基準について

保険適応の水準となるBMIと身長・体重の早見表です。

【BMI 27】→肥満に関連する健康障害がある場合に保険適応になるライン
150cm 60.7kg
155cm 64.8kg
160cm 69.1kg
165cm 73.5kg
170cm 78.0kg
175cm 82.6kg

【BMI 35】→高度肥満症で保険適応のライン
150cm 78.7kg
155cm 84.1kg
160cm 89.6kg
165cm 95.2kg
170cm 101.1kg
175cm 107.2kg

ウゴービってどんな薬?

ウゴービの有効成分であるセマグルチドはGLP-1受容体作動薬と言われ、既に糖尿病治療薬として「オゼンピック皮下注」という薬剤名で使用されています。
GLP-1は、脳の満腹中枢に作用して食欲が出過ぎることを抑えたり、胃内容物の排泄を遅らせて満腹感を高めたりすることで、体重減少作用があります。

投与方法は「オゼンピック」と同様、週1回皮下注射を行います。
用量は0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの5段階があり、0.25mgからスタートし4週毎に増量していきます。

ウゴービの効果はどれくらい?

気になる体重減少の効果として「STEP6試験」を紹介します。
これは日本人を含んだ東アジア人を対象とした臨床試験です。
治療開始して68週後の体重変化の評価で、
ウゴービ2.4mg群でマイナス13.2%
ウゴービ1.7mg群でマイナス9.6%
プラセボ群でマイナス2.1%
という結果になっています。(※対象患者は「ウゴービ」適応患者と同じです)

約13%のダイエット効果はかなりの成果と思われます(体重100kgの方は、13.2kgの減量効果ということになります)

副作用としては、有害事象に関しては、ウゴービ2.4mgで86%、1.7mg群で82%、プラセボ群で79%と報告されています。特に、嘔気・下痢・便秘などの胃腸障害が多く、ウゴービ2.4mg群で59%、1.7㎎群で64%、プラセボ群では30%といった結果でした。GLP-1には胃の動きを抑える作用があるので、嘔気や胃もたれのような症状は効果そのものとも捉えられます。

費用はどれくらい?

現時点(2023年3月時点)では薬価は決まっておりません。薬価収載と発売日の決定は少し先になります。

参考:同じ成分のオゼンピックの薬価です。
0.25mg:1376円/1本
0.5mg:2752円/1本
1.0mg:5504円/1本

まとめ

新規肥満症治療薬「ウゴービ」について解説しました。

これまで日本では、保険診療で長期間処方できて高いダイエット効果が見込める肥満症治療薬がありませんでした。
しかし今回、このウゴービによって多くの肥満症の方に対して治療が可能となります。肥満症の方が体重を減らすことで生活習慣病の発症予防になりますし、様々な健康障害を未然に防ぐことが期待されますので、使うべき患者さんが適正に使用すればメリットは大きいと考えられます。

ウゴービを処方するにあたっては、保険診療上の対象になるかを適切に判断し、注射の使い方や副作用のことなどを説明させていただいた上での適正使用が必要になる薬剤です。
ふくおか内科クリニックでは、オゼンピックを含めたGLP-1受容体作動薬の多くの使用経験がございますので、ウゴービが正式に使用できるようになりましたら、肥満症でお悩みの方はぜひご相談ください。

※肥満症治療剤のウゴービですが、2024年2月に発売となりました。しかし、厚生労働省より「最適使用推進ガイドラインを満たす施設」でのみの処方可能と通達が来ております。
このガイドラインを満たす施設は、大学病院などの大規模な医療機関に限られるとしております。
以上より、当院では残念ながら処方することは難しい状況です。いずれ、糖尿病専門医などの資格を持ち、肥満症治療に力を入れているクリニックでも処方が可能となることを願っております。


ふくおか内科クリニック 院長 福岡勇樹

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